イングランドやスコットランドを国と呼んでも良いのか?
今回の記事は高校生の読者の方からの面白い質問を頂いたので、それについて答えてみたいと思います。
この読者の方から頂いた質問は”イギリス(UK)に入っているそれぞれの「国」の正式な言い方”に関しての質問でした。
それでは質問はこちら:
読者の方の質問:
「私は高校生で、この間英語の授業でイギリスについてのプレゼンテーションをしました。
その時に「The UK has four countries.」と説明したら、アメリカ人の先生に「UKはcountryだけど、それぞれのScotlandとかは違う」みたいなことを言われたのです。
イギリスが連合国というのは分かっているのですが、EnglandやScotlandについて説明するときは「country」という単語は使わないのでしょうか?他に適した言葉があれば、教えていただきたいです!
よろしくお願いします:)」
- イギリス人らしさ・イギリス人の国民性を測るアンケート!?あなたのイギリス人度を測る面白テスト
- イギリス人をイライラさせる方法 TOP5 : イギリス人の国民性・性格とは?
- 国際結婚を考えている人は知っておきたい!イギリスと日本の恋愛・結婚カルチャーの違い
イギリスという国のコンセプト・考え方に関する事
先ずは、ご質問ありがとうございます。この質問内容については多くの方が気になっている事だと思ったので記事としてシェアーしてみました。実は、多くのイギリス人もこの質問に対して少し困るのではないかと思います。
何故なら「country」(国)という単語には色々な意味とニュアンスが含まれているからです。私も日本の中学生や高校生とイギリスについての話をする際に「The UK has four countries」という言い方を使います。
この説明はイギリスという国を紹介する際に最も分かりやすいと思っていたのですが、スコットランド、イングランド等を「country」と呼ぶと「イギリスは何なの?」という質問がよく出てきます。
私はこの質問に答える為に数多くのウェブサイトで情報を調べました。やはり、ウェブサイトによって情報が違います(信用できないウェブサイトも沢山あります!)。では、以下に正式な呼び方を紹介していきます。
「イギリス」の正式な言い方は「The United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland」になります。「United Kingdom」とは「連合王国」という意味になります。
「Great Britain」とは、イングランド、スコットランド、ウェールズが入っている島の名前です。「Northern Ireland」は「北アイルランド」になります。この四つの「国」は「イギリス」になります。
イギリスは、「country」と呼んでも良いですが、さらに厳密に言うと「sovereign state」という言い方が最も正式な言い方だと思います。
「Sovereign state」とは「独立国, 主権国家」という日本語になります。つまり、「sovereign state」には自分の国の政府がありますし、独立していますので他の国に頼りませんし、コントロールされません。
例えば、日本は「sovereign state」ですし「アメリカ合衆国」も「sovereign state」になります。
イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドは「country」と呼んでも大丈夫ですが、「sovereign state」ではありません。
イギリスの政府が管理しているウェブサイトを見ると、この四つの「国」は「country」と呼ばれています。「Country」という単語は具体的に定義する事が難しいです。
「Country」は「sovereign state」より抽象的なコンセプトです。ですから、イギリスを「country」と呼んでも良いですし、スコットランド等も「country」と呼んでも大丈夫です。
スコットランドには、自分達の「parliament」(=議会)がありますし、このparliamentはスコットランド国内で色々な事を決める事が出来ます。
例えば、スコットランドの教育制度や交通に関する方針や環境に関する方針等はスコットランドの議員でコントロールされています。
現在のスコットランドのリーダーはNicola Sturgeonという女性です。スコットランドでは2014年にスコットランドが独立した国(つまり、sovereign state)になる為の選挙が行われました。
結果は惜しくも独立する事は出来ませんでした。つまりスコットランドは独立したsovereign stateにはなりませんでした。いつか将来的にまた選挙行うかもしれません。
何故なら多くのスコットランド人は今も独立したいと考えているからです。実は1707年までスコットランドは「sovereign state」でした。
参考記事:「スコットランドの議員のセブサイト」
ウェールズも自分達の議会があります。ウェールズの議会は「parliament」ではなく、「Welsh assembly」か「National Assembly for Wales」と呼ばれています。
ウェールズのリーダーは現在Carwyn Jonesという男性です。ウェールズは「country」と呼ばれていますが、「principality」という言い方もあります。
「Principality」は日本語で「公国君主の地位」という意味になります。
北アイルランドにも議院があります。北アイルランドは「country」と呼ばれていますが、北アイルランドはイギリスの中でも最も微妙なエリアです。
「Region」(地域)という呼び方もありますし、「province」(州)という言い方もあります。「北アイルランド」という「エリア」(国?)は1921年に作られました。
北アイルランドはアイルランドという島の最も北の方のエリアで作られました。今回の記事ではアイルランドと北アイルランドの複雑な歴史については書ききれません。興味があれば是非読んでください。
参考記事:「北アイルランドについて」
イングランドは「国」ですが、自分達の議会はありません。イギリスの議会はイングランド(ロンドン)にありますが、この議会はイギリス連合王国の法律等を決めています。
イングランドは別のリーダーがいません。現在は、David Cameronという人がイギリス連合王国のPrime Minister (総理大臣)です。
オリンピックの際は「イギリス連合王国」という一つのチームで参加します。このチームは「Great Britain」や「Team GB」と呼ばれていますが、北アイルランド出身の選手も勿論参加しています。
しかし、国際サッカー大会(ワールドカップ等)においては、イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドは別のチーム(国のチーム)として参加します。
最近人気になっているラグビーではワールドカップの際、それぞれの国は別のチームで参加します。クリケットというスポーツの場合、「イングランドとウェールズ」という混合チームになりますが、アイルランド人とスコットランド人の選手も入る場合があります(笑)。
スポーツの話をすると、多くの人はイングランド、スコットランド等を「home nations」と呼びます。これは「イギリスに入っているそれぞれの国」という意味になります。
イギリスは国なのか:まとめ
では、長くなりましたが最後に今回の内容まとめると下記の言い方を使っても大丈夫です!
- イギリス: sovereign state, country, kingdom
- イングランド: country
- スコットランド: country, juridiction
- ウェールズ: country, principality, region
- 北アイルランド: country, region, province
そして質問を下さった方のアメリカ人の先生の意見は「半分正しいし、半分正しくない」と言えるでしょう(笑)。彼(彼女?)はどうやって「country」という単語を定義しているかにもよりますね。
しかし、イギリスの政府が管理しているウェブサイトを見るとスコットランド等は「country」と呼ばれています。
先生に文句が言いたいのであれば、下記のウェブページを印刷して本人に渡せばいいんじゃないでしょうか?(笑)