「ラブ・アクチュアリー」という映画で見られるイギリス英語の階級の違い
皆さんこんにちは。イギリス英語の勉強は進んでいますか^^ 嬉しい事に最近になって多くの読者の方から質問を頂いております。ありがとうございます!
という事で今回も読者の方から頂いた面白い質問に答えたいと思います。今回の質問のテーマは”イギリスの階級による話し方の違い”になります。
読者の方の質問:
「イギリス英語の階級による英語の違いについて知りたいです。映画、ラブアクチュアリーの中で階級による英語の違いは現れてますか?」
イギリス人の階級による話し方の違いやそれぞれの特長
ご質問ありがとうございました。これはとても面白い質問だと思います。実は私は今現在、イギリスの大学院で言語学を勉強しています。
そして丁度、本当にタイミングがいいのですが、今のテーマはイギリス英語の階級(クラス)の違いについて勉強しています。ですから質問のタイミングはluckyですね^^
そして、私はラブ・アクチュアリーという映画が大好だし、いつも当サイトでお勧めしていますのでこの質問がきて嬉しかったです。
ラブ・アクチュアリーというイギリス映画を観た事がない人もいると思いますので簡単に説明しますね。
ラブ・アクチュアリーは2003年に作られたラブストーリーの映画です。この映画の舞台はその殆どがロンドンです。ラブ・アクチュアリーは劇中に多くのラブ・ストーリーが展開されていきます。
その数多くの「愛情」の種類をクローズアップしている映画です。例えば、「兄弟愛」、「夫婦愛」、「片思い」、「青春時代の愛」などのラブストーリーが展開されていきます。
ラブ・アクチュアリーに出てくるラブ・ストーリーの中に「社会階級を超える愛情」を表現したものがあります。これはデイヴィッドとナタリーというキャラクターのストーリーです。
デイヴィッドというキャラクターはイギリスの新しい総理大臣です。彼は独身で少しプレイボーイなイメージがあります。デイヴィッドというキャラクターはヒュー・グラントというイギリス人の俳優によって演じられています。
デイヴィッドはエリートで偉い人ですし、話し方は「upper class」(上級階級)の特徴があります。ナタリーというキャラクターは総理大臣の邸宅の家政婦です。彼女は「working class」(労働階級)のマナーと話し方です。
彼女はとても可愛いので彼はナタリーと直ぐ恋に落ちます。ストーリーについてはこれ以上話さない方が良いと思いますので、後はお楽しみにとっておいて下さい。(笑)
では、ディヴィッドとナタリーの話し方の違いは何処にあるのでしょうか?どうしてイギリス人は直ぐに「ディヴィッドはアッパークラス」。「ナタリーはワーキングクラス」という事が分かるのでしょうか?
ラブ・アクチュアリーの動画を使って話し方を分析
少し映像を見ながらそれぞれの話し方をクローズアップしていきましょう。先ずは、このシーンを見てみましょう:
このシーン(Scene 8)の台詞は以下のリンクで読む事が出来ます:
では、デイヴィッドの話し方を分析してみましょう。彼は明らかにアッパークラスかアッパーミドルクラスです。
デイヴィッドの話し方の特徴
彼は殆どの子音をしっかりと発音しています。「Yeah」ではなく、「yes」と言いますし、「hated him」と言った際に「ヘイディドヒム」という発音を使っています。
「H」と「T」をはっきり発音しているという事は「RPの特徴」です。逆にもしナタリーが同じ台詞を言った場合、「h」と「t」をカットするかもしれません。
彼女の場合、「エイ・イディム」という発音になるでしょう。(カタカナではうまく表現できませんが、あえてわかりやすく説明しています)
アッパークラスの人が話す英語の特徴としてもう一つ、「Tuesday」、「tune」、「news」などの発音があります。
これらの単語はデイヴィッドとナタリーのシーンには出てきませんが、もし言った場合は下記の発音のような違いがあると思います。
例:
Tuesday
David: トューズデイ(またはトューズディ)
Natalie: チューズデイ
Tune
David: トューン
ナタリー: チューン
News:
David: ニューズ
ナタリー:ヌーズ
デイヴィッドの言葉遣いと単語の選び方にも少し特徴があると思います。彼は何度も「understatement」や「irony」を使っています。
例文:
Annie: Would you like to meet your household staff?
(邸宅のスタッフに挨拶をしましょうか?)
PM: Yes, I would like that very much indeed. Anything to put off actually running the country.
(そうですね、喜びます。実際に国を管理するのを延期すればなんでもいいよ。)
※Ironyとunderstatementという現象は以前な記事で紹介しました:
参考:「イギリス英語(イギリス人)のアイロニーの使い方と詳しい使い方・ニュアンスを例文を交えて紹介」
ナタリーはコックニー(ロンドンのエリア)のアクセントで話します。彼女は話す際に「h」を発音しない時が多いです。そして、単語の最後の「t」をはっきり言いません。
代わりに「glottal stop」(日本語:声門破裂音)を使います。もう一つの発音の特徴は単語の最後の「l」の発音です。彼女は「awful」という単語を言う際に最後の「l」の発音をはっきり言いません。
その代わりに発音は「w」に近いです。上で紹介した動画は「0:57分」から始まる台詞を聞いてみましょう。特に「have」、「awful」、「piss it」の発音に注目して聞いてみてください。
Natalie: Thank you, sir. I did have an awful premonition I was gonna fuck up on my first day. Oh, piss it!
ナタリーは総理大臣と話す時に凄く緊張して、思わず「fuck up」や「piss」などのタブーなスラングを言ってしまいましたね(笑)。
ナタリーの「I」と「my」の発音も少しコックニーっぽいと思います。「I」は「アイ」ではなく、「ア」になります。「My」の発音は「マイ」ではなく「マ」や「ミ」になります。
皆さん、ナタリーとデイヴィッドの話し方の違いが聞き取れましたでしょうか?
私は以前に当サイトで階級とその話し方について書いた事があります。その際にデイヴィッド・ベッカムの発音の「変化」について書きました。
参考リンク:「デビット・ベッカムの英語は訛っていますか?ベッカムが話すイギリス英語はどんな英語なのでしょうか?」
彼の若い頃の話し方と比べた場合、現在はかなり綺麗に話せるようになりました。彼はワーキング・クラスの話し方からレベルアップしようとしているようです。
多くのイギリス人は、自分のワーキング・クラスのルーツを隠すために話し方を変えようとします。しかし、実は真逆の現象もあります。
現在、イギリスの財務大臣(Chancellor of the Exchequer)はジョージ・オズボーンという人物です。彼は非常に「posh」な人間です(笑)。
彼の両親は貴族で、ジョージ・オズボーン自身もイギリスの最もエリートな学校と大学に通っていました。
彼は間違いなく「posh」な人間です(笑)。そして、話し方もアッパー・クラスっぽいです。実は彼はこの間、工場の労働者の人達の為にスピーチをしました。
その際に彼はスピーチを聞いている人の為にわざと自分の話し方を「レベルダウン」させました。
彼は話し方をわざと変えたのか、話し方を考えずに変えたのか本当の事はよく分かりませんが、この事でジョージ・オズボーンはメディアに凄くバッシングを受けました。
彼は「T」の発音をカットしたり、「T」を「D」のように発音したりしました。下記に彼のスピーチが聞けるリンクを紹介しますので、彼が話す「British」という単語の発音を聞いてみてください。
よく聞くとわかりますが、「Briddish」という発音を使ってしまいました(笑)。
‘Mockney’ George Osborne backs working Briddish with dodgy accent
彼の発音はメディアに「mockney」と呼ばれました。「Mockney」は「mock」(=偽者)と「cockney」という二つの単語を組み合わせて作られた単語です。つまり、彼のアクセントは偽者という事です(笑)。
この事件を日本で例えた場合、関東出身の政治家が関西で政治に関するスピーチをする際にいきなり関西弁で話し出すという感じでしょうか。それってとても変ですよね。みんな笑ってしまいますよね^^