エリザベス女王の発音はもうクイーンズ・イングリッシュではない?
私はこの記事を書く前のある面白い記事を見つけました。この記事によると「エリザベス女王の英語の発音は若い時と比べてだいぶ変わって下品になった」という分析の記事です(笑)。
つまり、この記事の分析によると、ザ・クイーンはもう「クイーンズ・イングリッシュ」を喋っていないという分析なんです(笑)。しかし、それは本当なのでしょうか?
私が今回発見した記事はこちらになります。興味がある方が以下のリンク先をご覧ください。
この記事を読んでみると、エリザベス女王の発音は別に下品になったというわけではありませんが、確かに発音は昔と比べるとかなり変わっています。これは間違いない事だと思います。
そして、エリザベス女王だけではなく、「イギリスの貴族・上流階級の人たちが使う発音も変化している」という現象もみられるです。
そこで今回はこの記事の最も面白い内容をまとめて読者のみなさんに分かりやすく日本語にしてみました。
クイーンズ・イングリッシュの歴史
大昔は現在と違って、イギリスの貴族や上流階級の人は、一般の人と同じ地方なまりを話していたそうです。つまり、アクセントと発音だけでは人の階級があまり分かりませんでした。
しかし、19世紀から20世紀にイギリスでは寄宿学校(英語:boarding school)が増えました。イギリスの寄宿学校に通った生徒達は全国から集まった子達でしたが、学校の場所はその殆どが南の地方(ロンドンの周辺)にありました。
その為、先生と生徒たちはお互いにロンドンっぽい発音を話すようになりました。この寄宿学校で生まれた発音は「received pronunciation」(またはRP)と呼ばれるようになりました。
また、お金持ちや上流階級の人しか寄宿学校に通わないので、RPは上流階級の人の特有の発音として知られるようになりました。20世紀の前半には、BBCのラジオやテレビのアナウンサーは必ずRPの発音を使いました。この為、RPは「BBCイングリッシュ」という名前もつけられました。
「キングズ・イングリッシュ」または「クイーンズ・イングリッシュ」という言い方も使われるようになりました。
イギリス英語RPの特徴
伝統的なRPの発音には色々な特徴があります。特に母音の発音には特徴があります。例えば、以下のような例です。
poorとmoorの発音
RPの発音では、この二つの単語は「プアー」と「ムアー」になります。現在の普通の南の方の発音(Estuary English)では、「ポー」と「モー」になります。つまり、伝統的なRPの発音では「二重母音」になります。
reallyとveryの発音
伝統的なRPでは、この二つの単語は「リアレ」と「ヴェレ」になります。一般のEstuary Englishでは、「リアリ」と「ヴェリ」になります。
cat、sat、matの発音
伝統的なRPでは、「a」の発音は「エ」になります。つまり、上記の三つの単語の発音は「ケット」、「セット」、「メット」になります。一般のEstuary Englishでは、「キャット」、「サット」、「マット」になります。
声門破裂音について
私は別の記事で「声門破裂音」について紹介した事があると思います。伝統的なRPでは、声門破裂音があまり使われていません。しかし、一般のEstuary Englishでは声門破裂音がかなり使われています。
例えば、RPでは、「twenty」という単語は「トゥウェンテ」になりますが、コックニーやEstuary Englishでは「トゥウェン・イ」になります。
エリザベス女王の発音の変化
エリザベス女王の発音は少しずつEstuary Englishっぽくなってきているようです。昔のスピーチを聞くと、女王の発音は伝統的なRPの特徴が強いです。
例えば、「Family」という単語は昔「フェミレ」でした。現在のスピーチを聞くと、「ファミリ」という発音に近いです。
つまり、エリザベス女王の発音は「中流階級化」しています。ウィリアム王子やヘンリー王子の話を聞くと、彼らはもっと中流階級っぽい発音を使っています。
彼らの発音は声門破裂音を使うほど中流階級化しています。面白い事にキャサリン王女の発音はウィリアム王子より伝統的なRPの発音に近いです。
おそらく、キャサリン王女は元々中流階級の家族に生まれた事もあり、自分の話し方にもっと気を配っているのかもしれません。
皆さん、よければエリザベス女王の1957年のクリスマススピーチと2015年のクリスマススピーチを聞いてみて下さいね。発音は変わったと思いますか?
そして、ウィリアム王子とキャサリン王女の発音を聞いてみて。どちらの発音の方が綺麗だと思いますか?(笑)