イギリス英語のアクセント・発音で「エスチュアリー英語とRPの違い」とはどんな点?
この「Estuary English(河口域英語)」というイギリス英語のアクセントは、多くのイギリス映画やドラマに出てきますので、イギリス英語を勉強している方は是非とも聞き慣れておきたいアクセントだと思います。
それでは、実際に頂いた質問はこちらになります:
読者の方の質問:
いつも楽しく記事を読ませていただいています。
ドラマ「the office」の記事で、劇中のイギリス英語はスラウという場所のアクセントで少し訛っていると書かれているのを読んで、調べてみたところ「the office」は”Estuary English”という英語が話されているという記事を見つけました。
この”Estuary English”とはどのようなアクセントなのか、RPとの発音がどう違うのか教えていただけないでしょうか。
また、オーストラリア英語アクセントは疑問文でなくても上昇するという特徴があると思うのですが、”Estuary English”にそのようなイントネーションの違いもありましたら解説していただけるとありがたいです。
先ずはご質問ありがとうございます。そして、いつも当サイトを読んで頂きましてありがとうございます。
それでは、最初にこの記事のメインテーマになる「Estuary English」というイギリス英語のアクセントについてお話していきたいと思います。
Estuary English(河口域英語)とは? どんなアクセント?
Estuary Englishとは、イングランドのテムズ川周辺に住んでいる人が話すイギリス英語のアクセントになります。テムズ川はロンドン、オックスフォード、レディングなどの都市に流れている川です。
この「Estuary」という単語は「河口」という意味になる単語です。「Estuary English」とは、元々はテムズ川の河口周辺で話されていたアクセントですが、最近このアクセントはイギリス国内で広がっています。
ですから、今現在はイギリスの他のエリアでも話されているアクセントとなっています。人数にすると約「900万人」のイングランド人がこのアクセントで話すそうです。
このアクセントは少しだけコックニーに似ていますが、コックニーは元々ロンドン出身のワーキングクラスの人達が話すアクセントでした。
Estuary Englishは、ミドルクラスの下の方(lower-middle)から真ん中の人が話すアクセントです。そのため、一般的にEstuary Englishは「poshな話し方」ではありません。
もっとわかりやすく言うと、普通のイギリス人が話す「標準語」と言った感じになります。実はRPはとても上流階級っぽいイメージがあります。イギリス人は直ぐRPとEstuary Englishの違いを理解します。
Estuary Englishの特徴とは?
下の動画はEstuary Englishの特徴を紹介しています。動画のナレーターはこのアクセントについて上手に説明していると思いますが、イギリス英語初心者の方には少し理解しづらい部分があると思いますので、Estuary Englishの特徴を要約して紹介したいと思います。
Lの発音(all, walkなど)
RPを話すイギリス人は「all」という単語を「オール」と発音しますが、Estuary Englishを話す人は最後の「l」を「w」のように発音するという特徴があります。
そして「walk」、「talk」などの単語も同じ現象が起きます。つまり、「l」の代わりに「w」の発音をする癖があります。
声門破裂音
Estuary Englishを話すイギリス人の多くは「声門破裂音」を使って話します。これは「T」の代わりに出す音です。例えば、「bottle」という単語の真ん中の「t」を発音せずに「声門破裂音」を使います。
ですから、発音は「ボトル」ではなく、「ボッウル」に近いです。しかし、この声門破裂音の使い方はTPO(シーンによって)によって変わると思います。例えば、みんな必ず使うわけではありません。特に単語を強調したい際にはちゃんと「t」を発音する傾向があります。
hを抜く
もう一つの特徴は「h」を抜くという癖です。これも場合によっては使う場合と、使わない場合があります。例えば、「What’s he doing?」の「he」は「イ」になります。
つまり、あえてカタカナ発音でわかりやすく説明すると「ウウォツイドゥーイング」というような発音になります。「house」は「アウス」になります。
tuは「チュー」になる
Tuesdayという単語はRPの発音で言うと「トューズデイ」といったような発音になりますが、Estuary Englishで発音するとその「Tu」の発音は「チュー」になります。
つまり、「チューズデイ」になります。「Tube」は「チューブ」になります。
thはfの発音になる
この発音はEstuary Englishよりもコックニーの発音の特徴に近いですが、この二つのアクセントにはクロスオーバーがありますので、こちらも合わせて紹介したいと思います。
多くの人は「th」の時に「f」の発音を使います。例えば、「thought」という単語の「th」は「f」の発音になります。つまり、「フォート」という発音になります。
これ以外にも他の微妙な母音の違いがあります。説明が非常に長くなってしまうので、今回の記事では省略しますが、興味がある方はウィキペディアのEstuary Englishを紹介しているページをご覧になると理解が深まると思います。
オーストラリア英語の特徴として「上昇するイントネーション」について
読者の方がおっしゃるように、オーストラリア英語を話す人は「それが質問ではなくともイントネーションを上昇させる」という癖があります。実はこの癖はイギリス英語にもあります。
特にイギリス人の若者はこのようなイントネーションを使う人が増えています。Estuary Englishを話す若者には特に多い現象だと思います。
そして、この話し方は主に、男性よりも女性が特に使うという傾向があるそうです。RPを話すイギリス人は「半疑問形」はあまり使いません。
Estuary Englishが出てくるイギリスのドラマはどれ?
読者の方がおっしゃるように以前のレビューした「The Office」のキャラクターは主にEstuary Englishのアクセントで話しています。実は、殆どのイギリスのテレビドラマやコメディーでは、Estuary Englishを話すキャラクターがいます。
例えば、The Inbetweeners (Netflix)や、Morse (U-NEXT)、Death in Paradise、Luther、Mistressesといったテレビドラマには、Estuary Englishが出てきます。
イギリスのドラマに興味がある方であれば、U-NEXTという動画サービスは特にイギリスのテレビドラマに強いのでお勧めですす。そして、RPとEstuary Englishの違いを聞き比べしながらリスニング学習してみたいという方は、私が書いた「日本人が知らないイギリス英語2」という電子書籍はお勧めです。
私の事を友人のイギリス人男性の音声を録音していて教材にしています。私の発音はRPですが、彼の発音はEstuary Englishに近いです。この教材に付属している音声を聞いていれば両方のアクセントの勉強になると思います。
それでは、今回の記事ではEstuary Englishというイギリス英語のアクセントを紹介してみました。他にもイギリス英語に関する質問がある方は、どんな内容でも結構です。是非ご連絡くださいね!